区分所有法第38条の2は、行方不明の区分所有者がいる場合の集会決議について定めた条文です。区分所有者の所在が分からないと、本来必要な決議ができず管理が止まってしまうことがあります。そこで、一定の場合には裁判所の判断により、行方不明者を除外して集会決議を行える制度が設けられています。
条文
(所在等不明区分所有者の除外)
第三十八条の二
裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、当該区分所有者(次項において「所在等不明区分所有者」という。)以外の区分所有者(以下この項及び第三項において「一般区分所有者」という。)又は管理者の請求により、一般区分所有者による集会の決議をすることができる旨の裁判をすることができる。
2 前項の裁判により所在等不明区分所有者であるとされた者は、前条の規定にかかわらず、集会における議決権(当該裁判に係る建物が滅失したときは、当該建物に係る敷地利用権を有する者又は当該建物の附属施設(これに関する権利を含む。)の共有持分を有する者が開く集会における議決権)を有しない。
3 一般区分所有者の請求により第一項の裁判があつたときは、当該一般区分所有者は、遅滞なく、管理者にその旨を通知しなければならない。ただし、管理者がないときは、その旨を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
今回学ぶポイント
- 行方不明者=所在等不明区分所有者
- 裁判所の裁判により、行方不明者を除外して集会決議が可能
- 裁判が通ると、所在等不明区分所有者は議決権を失う
解説
1項
裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、当該区分所有者(次項において「所在等不明区分所有者」という。)以外の区分所有者(以下この項及び第三項において「一般区分所有者」という。)又は管理者の請求により、一般区分所有者による集会の決議をすることができる旨の裁判をすることができる。
まず、行方不明の区分所有者のことを、この条文では「所在等不明区分所有者」と呼びます。
そして、それ以外の通常の区分所有者を「一般区分所有者」と呼びます。
では、この条文で何ができるのでしょうか。
一般区分所有者または管理者が裁判所へ請求することで、所在等不明区分所有者を除外して集会決議を行える旨の「裁判」をしてもらうことができます。
ここは条文の言い回しが遠回しで、試験でも勘違いしやすいポイントです。第38条の2第1項は、「集会決議ができる」と直接定めているのではなく、「そのための裁判を行える」と定めている条文です。
また、請求できるのは一般区分所有者だけではありません。管理者も請求できる点に注意しましょう。
2項
前項の裁判により所在等不明区分所有者であるとされた者は、前条の規定にかかわらず、集会における議決権(当該裁判に係る建物が滅失したときは、当該建物に係る敷地利用権を有する者又は当該建物の附属施設(これに関する権利を含む。)の共有持分を有する者が開く集会における議決権)を有しない。
裁判所が所在等不明区分所有者であると認めた場合、その者は議決権を失います。
つまり、所在等不明区分所有者を除外して、一般区分所有者のみで集会決議ができるようになります。
()書き部分は少し難しいですが、簡単に言うと、マンションが滅失して土地だけになった場合でも、裁判が通ると、所在等不明区分所有者は議決権を持たないという意味です。
つまり、どのような場面であっても、裁判が通った所在等不明区分所有者は議決権を失うと整理すればOKです。
3項
一般区分所有者の請求により第一項の裁判があつたときは、当該一般区分所有者は、遅滞なく、管理者にその旨を通知しなければならない。ただし、管理者がないときは、その旨を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
3項は、一般区分所有者が裁判を起こした場合に必要な対応を定めています。
一般区分所有者の請求により裁判があったときは、遅滞なく、その旨を管理者へ通知しなければなりません。
ここで注意したいのは、「遅滞なく」=「すぐに・合理的な期間内に」という意味であり、1週間以内など具体的な日数ではないという点です。
また、管理者がいない場合には、通知の代わりに建物内の見やすい場所へ掲示しなければなりません。
なお、3項は「一般区分所有者の請求」に限定された規定**です。したがって、管理者が裁判を請求した場合は、通知や掲示は不要となります。
この理由はシンプルで、3項は「管理者へ通知する」という規定だからです。
そのため、管理者自身が裁判を請求した場合、自分自身に通知することになってしまうため、通知・掲示は不要となります。
補足|民法の所在等不明共有者制度との関係
区分所有法では、所在等不明区分所有者について第38条の2で独自ルールが設けられています。
そのため、区分所有法第6条第4項では、民法の所在等不明共有者に関する規定を適用しないと定めています。
区分所有法 第六条第四項
民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条の八及び第二百六十四条の十四の規定は、専有部分及び共用部分には適用しない。
ここでいう民法264条の8・264条の14は、所在等不明共有者(行方不明者)がいる場合の共有物管理に関する規定です。
しかし、マンションでは、区分所有法第38条の2により、裁判所の裁判を経て、所在等不明区分所有者を除外して集会決議を行うという、より厳格な特別ルールが設けられています。
そのため、マンションの専有部分・共用部分については、民法の共有ルールではなく、区分所有法の特別ルール(第38条の2など)が優先して適用されます。
この民法が適用されないと規定されているのは、他にも区分法により厳しいルールが定められているからです。
解説図

試験ポイント
- 行方不明者=所在等不明区分所有者
- 一般区分所有者または管理者が裁判所へ請求可能
- 第38条の2は「裁判ができる」条文
- 裁判が通ると所在等不明区分所有者は議決権を失う
- 一般区分所有者が請求した場合は「遅滞なく」管理者へ通知
- 管理者がいない場合は見やすい場所へ掲示
- 民法の所在等不明共有者(行方不明者)がいる場合の共有物管理に関する規定は区分所有法では適用除外
練習問題
問題1
所在等不明区分所有者がいる場合、一般区分所有者は裁判を経ずに、その者を除外して集会決議を行うことができる。
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答え:×
第38条の2第1項は、裁判所の裁判により、所在等不明区分所有者を除外して集会決議ができる旨を定めています。勝手に除外することはできません。
問題2
所在等不明区分所有者の除外について裁判を請求できるのは、一般区分所有者のみである。
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答え:×
一般区分所有者だけでなく、管理者も請求可能です。試験では「管理者もできる」点が狙われやすいポイントです。
問題3
裁判所により所在等不明区分所有者と認められた者は、建物が滅失した場合は議決権を有する。
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答え:×
建物が滅失して土地だけになった場合でも、所在等不明区分所有者は議決権を有しません。括弧書きはその点を定めています。

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