区分所有法第46条の2は、所有者が分からない、又は所在不明の専有部分について、裁判所が管理人を付けられる制度を定めた条文です。所有者不明の部屋を放置すると、管理費滞納や建物管理に支障が出るため、一定の場合に管理人を選任できるようにしています。
かなり長い解説になりますが、マンション特有の法律なのでよく読み込んで理解を進めましょう。
条文
(所有者不明専有部分管理命令)
第四十六条の二
裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない専有部分(専有部分が数人の共有に属する場合にあつては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない専有部分の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る専有部分又は共有持分を対象として、所有者不明専有部分管理人(第四項に規定する所有者不明専有部分管理人をいう。第三項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明専有部分管理命令」という。)をすることができる。
2 所有者不明専有部分管理命令の効力は、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分(共有持分を対象として所有者不明専有部分管理命令が発せられた場合にあつては、共有物である専有部分)又は共用部分、附属施設若しくは建物の敷地にある動産(当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分の区分所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)並びに共用部分及び附属施設に関する権利並びに敷地利用権(いずれも当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分の区分所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
3 所有者不明専有部分管理命令は、所有者不明専有部分管理命令が発せられた後に当該所有者不明専有部分管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分又は共有持分並びに当該所有者不明専有部分管理命令の効力が及ぶ動産並びに共用部分及び附属施設に関する権利並びに敷地利用権の管理、処分その他の事由により所有者不明専有部分管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4 裁判所は、所有者不明専有部分管理命令をする場合には、当該所有者不明専有部分管理命令において、所有者不明専有部分管理人を選任しなければならない。
今回学ぶポイント
- 所有者不明の専有部分に管理人を付けられる制度
- 1項は裁判所の裁量(できる規定)
- 効力は部屋だけでなく関連財産にも及ぶ
解説
1項
裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない専有部分(専有部分が数人の共有に属する場合にあつては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない専有部分の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る専有部分又は共有持分を対象として、所有者不明専有部分管理人による管理を命ずる処分(以下「所有者不明専有部分管理命令」という。)をすることができる。
1項では、所有者が分からない、又は所在不明の専有部分について、裁判所が管理人を付けられる制度を定めています。
例えば、所有者が行方不明で連絡が取れず、管理費滞納や建物管理に支障が出ている場合などがイメージしやすいです。
ポイントは、裁判所が、利害関係人の請求により、所有者不明専有部分管理人による管理を命じられるという点です。
なお、1つの専有部分を複数人で共有している場合には、所在不明となっている共有者の持分だけを対象として管理命令が出されることもあります。
また、裁判所は管理命令を「することができる」とされているため、義務ではなく裁量です。必要があると認めた場合に限り、管理命令を出します。
2項
所有者不明専有部分管理命令の効力は、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分(共有持分を対象として所有者不明専有部分管理命令が発せられた場合にあつては、共有物である専有部分)又は共用部分、附属施設若しくは建物の敷地にある動産(当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分の区分所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)並びに共用部分及び附属施設に関する権利並びに敷地利用権(いずれも当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分の区分所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
2項では、所有者不明専有部分管理命令の効力がどこまで及ぶかを定めています。
簡単に言うと、「その部屋だけでなく、その部屋に関係する財産にも効力が及ぶ」という条文です。
管理命令の効力が及ぶ対象は、次のとおりです。
- 専有部分そのもの
- 動産(物)
建物・共用部分・附属施設・敷地内にある物
※ただし、所有者不明者の所有物に限る - 共用部分に関する権利
- 附属施設に関する権利
- 敷地利用権
つまり、「部屋+その部屋に関連する財産・権利一式」に効力が及ぶイメージです。
対象となるのは所有者不明となっている区分所有者の財産に限られます。そのため、第三者の所有物まで管理できるわけではありません。
条文の()内は、対象となるのは「所有者不明となっている区分所有者の財産」に限るという意味です。
つまり、例えば共用部分に置かれている他人の自転車など、第三者の所有物まで管理できるわけではありません。
3項
所有者不明専有部分管理命令は、所有者不明専有部分管理命令が発せられた後に当該所有者不明専有部分管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分又は共有持分並びに当該所有者不明専有部分管理命令の効力が及ぶ動産並びに共用部分及び附属施設に関する権利並びに敷地利用権の管理、処分その他の事由により所有者不明専有部分管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
3項では、管理命令が取り消された後の処理について定めています。
例えば、所有者不明専有部分管理人が専有部分を処分して売却代金を得た場合など、管理や処分の結果として財産が発生することがあります。
その後に管理命令が取り消されたとしても、その財産を放置すると問題になるため、必要がある場合には、管理人が得た財産についても引き続き管理命令を出すことができます。
つまり、命令が終了した後でも、管理中に発生した財産まで放置しないためのルールです。
4項
裁判所は、所有者不明専有部分管理命令をする場合には、当該所有者不明専有部分管理命令において、所有者不明専有部分管理人を選任しなければならない。
4項では、裁判所が所有者不明専有部分管理命令を出す場合、所有者不明専有部分管理人を選任しなければならないことを定めています。
ここは「しなければならない」とされているため、義務規定です。
1項の「することができる(裁量)」と対比で覚えると整理しやすくなります。
試験ポイント
- 1項:「することができる」→ 裁判所の裁量
- 2項:効力は専有部分+関連財産に及ぶ
- 3項:取消後でも管理中に得た財産に命令可能
- 4項:「しなければならない」→ 管理人選任義務
練習問題
練習問題
問題1(1項)
裁判所は、所有者不明専有部分について利害関係人の請求があった場合、必ず所有者不明専有部分管理命令をしなければならない。
回答を見る
×
解説
誤りです。裁判所は、必要があると認めたときに管理命令を「することができる」のであり、義務ではありません。裁判所の裁量です。
問題2(2項)
所有者不明専有部分管理命令の効力は、対象専有部分に限られ、共用部分等に関する権利や敷地利用権には及ばない。
回答を見る
×
解説
誤りです。管理命令の効力は、専有部分だけでなく、共用部分及び附属施設に関する権利や敷地利用権など、関連する財産にも及びます。
問題3(3項)
所有者不明専有部分管理命令が取り消された場合、所有者不明専有部分管理人が管理や処分によって得た財産について、必要があると認められても、管理命令をすることはできない。
回答を見る
×
解説
誤りです。管理命令が取り消された後でも、管理人が得た財産について必要があると認められる場合には、引き続き管理命令をすることができます。
問題4(4項)
裁判所は、所有者不明専有部分管理命令をする場合、所有者不明専有部分管理人を選任しなければならない。
回答を見る
○
解説
正しいです。4項では、管理命令を出す場合、裁判所は管理人を選任しなければならないとされています。
コメント